昭和こども園 〜屋上園庭と中庭が子供を育てる〜
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設計担当:納谷学、納谷新、太田諭、島田明生子
構造設計:yAt構造設計事務所 森部康司
設備設計:ZO設計室 柿沼整三
照明計画:岡安泉照明設計事務所 岡安泉
家具設計:藤森泰司アトリエ 藤森泰司
カーテン:安東陽子デザイン 安東陽子
サイン計画:寺田直樹
粟辻デザイン 粟辻美早、粟辻麻喜
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施工会社:東急建設株式会社
建築用途:こども園
建築規模:地下1階 地上3階
構造形式:地下1階・1階 RC壁式構造
2・3階 鉄骨造竣工年月:2015年8月
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敷地面積:66,489.55m² (20,113.09坪)
延床面積:2871.22m² (865.54坪)
地下面積:90.83m² (27.47坪)
1階面積:1,549.60m² (468.75坪)
2階面積:671.61m² (203.16坪)
3階面積:586.48m² (177.41坪)
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受賞歴 :こども環境学会賞 デザイン奨励賞
日事連建築賞 一般建築部門 奨励賞掲載誌 :『新建築 2016年5月号』
『建築技術796 2016/05』
昭和女子大学のキャンパス内に「昭和こども園」を計画しました。
クラスは、0歳児から5歳児まで12クラス、延べ223人の子供達のための施設です。
園庭を2階レベルに持ち上げ、建物全体を3階に抑えて明るい園庭を確保しました。50mにおよび道路と接する西側は、街にも開放的で圧迫感のない子供たちの賑わいが街を豊かにする建築を目指しました。
1階には、低学年クラスや事務スペース、運動場など、多くの諸室を中庭と先生ステーションの周りに計画して、全体としてリング状の行き止まりのないプランとしています。クラス間の壁も最小限に抑え、自由に行き来できます。
大きな中庭は1階に光と風を届け、子供達はそこで安全で自由に活動することができます。
2・3階はプランの自由度を守りつつできるだけコンパクトにして、大きな園庭を確保しました。
そして、園庭にはキャンパスから直接アクセスできる大階段と2つの丘を用意しました。
子供達は教室と園庭を自由にアクセスでき、日常的には通学・下校時に使い、授業では楽しく丘を駆け回りますが、非常時にもパニックにならずに安全に避難できるように計画しました。
新しいこども園では、旧園舎のステンドグラスや壁画タイル、風見馬などを積極的に使い、外壁は屋根などの色を踏襲することで、卒業生にも親しみを感じてもらえるようにししました。
「昭和こども園」が、昭和女子大学らしいキャンパスの顔としてだけではなく、巣立っていく子供たちの思い出に残る豊かな場となることを望んでいます。
『新建築 2016年5月号』のTEXT
〜開放性とサーキュレイトアクティビティ〜
計画地は、世田谷区の昭和女子大学のキャンパス内にある。西門に隣接するその敷地には、もともと幼稚園が建っていたが、キャンパス外にあったナースリーと一体化させ、「昭和こども園」として立替え運営することになった。要求されたクラスは、0歳児から5歳児まで12クラス、延べ223人の子供達のための施設である。計画当初、学園側は4階建ての要望だったが、我々は園庭を2階レベルに持ち上げ、建物全体を3階に抑えて、季節を問わずお日様が降り注ぐ明るい園庭を確保した。施設の西側は、およそ50mにもおよび道路と接する。子供達にはもちろん街にも開放的で圧迫感のない優しい建築を目指した。園庭の下には、低学年クラスや事務スペース、運動場など、多くの諸室を用意し、全体として8の字を描くような行き止まりのないプランとした。クラス間の壁もランダムに最小限に抑え、あたかも家具で仕切っているかのようにすることで、子供達が自由に行き来できる。2・3階は、プランの自由度を守りつつも出来るだけコンパクトにして、活発な年上の子供達が各クラスから園庭にどこからでも直接飛び出ていける。園庭には2つの丘を作った。丘を作ることで、園庭の上では子供達は楽しく駆け回り、その下では多くの光を事務所の奥まで優しく導く。また、園庭には大きな中庭と大階段を用意した。中庭は、1階の大きな平面に光を届け、年下の子供達は外でも安全で自由に活動することができる。また、大階段は古典的だが正面性を意識しながら、キャンパス内の広場から直接アプローチできるようにした。新しいこども園では、旧園舎のステンドグラスや壁画タイル、風見馬などを積極的に使い、外壁は屋根などの色を踏襲することで、卒業生にも親しみを感じてもらえるようにした。さまざまな操作と配慮の結果、この「昭和こども園」が、歴史と伝統を重んじる昭和女子大学らしく、キャンパスと街の顔となるようなファサードを描くことを望んでいる。
『建築技術796 2016/05』のTEXT
〜開放性とサーキュレーションアクティビティ〜
背景
学校法人 昭和女子大学は、世田谷区にある。幼稚園から大学院までの一貫校で、初等部までは男女共学、中等部から女子のみとなる。計画地は、昭和女子大学のキャンパス内にあり、キャンパス西門に隣接し初等部校舎と繋がっている。その敷地には、もともと幼稚園が建っていたが、今回の計画では、キャンパス外にあったナースリーと一体化し、「昭和こども園」として建て替え運営することになった。もちろん、既存初等部校舎と繋げ、給食センターを共有することも条件の一つである。要求されたクラスは、0歳児から5歳児まで12クラス、延べ223人の子供達のための大きな施設である。計画当初は、法律が整備されていなかったため、保育園と幼稚園を一つの建物の中に共存させ、将来的に一緒に運営できるようなプランにしてほしいとの要望だったが、結局、計画途中から保育園と幼稚園が一体となった「こども園」という新しい時代の施設として計画することになった。
全体計画
学園側は、当初地下1階・地上4階のビルディングタイプの施設として考えていた。しかし、それでは園庭のほとんどが終日園舎の陰になってしまう。われわれは、園庭を2階レベルに持ち上げ、建物全体を地上3階にし、地下面積を最小限に抑え、季節を問わずお日様が降り注ぐ、明るい園庭を確保した。施設の西側は、およそ50mにもおよび西側の道路と接することになる。道路沿いにあった既存のPC塀を撤去し、可視性の高いネット状のフェンスで子供達のアクティビティが街に溢れ出るようにした。地上3階にして、こども園を街に開くことで、子供達にはもちろん、街にも開放的で圧迫感のない優しい建築になった。2階の園庭の下には、低学年クラスや事務スペース、運動場など、多くの諸室を用意し、逆に2・3階は、プランの自由度を守りつつも出来るだけコンパクトにして、園庭の上にのせた。そして、活発な年上の子供達が各クラスから広い園庭に、どこからでも直接自由に飛び出ていけるようにした。園庭には2つの丘を作り、上では子供達が自由に丘を駆け回り、その下では外部の光を柔らかく還元して事務所の奥まで優しく導く。また、園庭には大きな中庭と大階段を用意した。中庭は、大きな平面となった1階に光を届け、低学年の子供達は外でも安全で自由に活動することができる。また、大階段は古典的だが正面性を意識しながら、キャンパス内の広場から直接アプローチできるように配置した。さまざまな操作と配慮の結果、この「昭和こども園」が、歴史と伝統を重んじる昭和女子大学らしく、キャンパスと街の顔となるようなファサードを描くことを望んでいる。
サーキュレーションプラン
「昭和こども園」の計画の全体像として、行き止まりのない8の字を連続させたようなプラニングを意識した。こども達にとって、丘を昇り降りすることと同様に、平面的にぐるぐると走り回れたりすることは、大切なアクティビティだと考えている。外部では園庭の上に校舎をのせているため、子供達は校舎の周りを一周できる。また、中庭を中心に子供達は元気に活動し、上で遊ぶ年上の子供達と下で遊ぶ年下の子供達との接点にもなる。内部の壁は、西側道路と直行した一方向のできる限り小さな壁にして、こども達からも街からも開放的で死角のないプラニングとした。クラスの境界の建具を開放すれば、隣のクラスと繋がり、子供達はいろいろな方向から行き来することができ、3クラス同時の授業も可能となる。
引き継ぐものと新しい素材
新しい「昭和こども園」では、なるべく子供達や昭和の卒業生に愛される建物となるように、旧幼稚園で使われていた園舎の思い出のものを使うことにした。例えば、遊戯場のステンドグラスやエントランスの壁画タイル、門の鐘に風見馬、などである。そして、2階の外壁は、焼き杉に旧幼稚園の屋根の色の塗装を施し、3階の外壁は旧幼稚園の白い外壁をイメージするように白いガルバリュウム鋼板にして、新しい校舎になっても卒業生もなんとなく馴染みやすさを得られるようなカラーコーディネイトとした。