古民家ヴィラ「あんたげ」 〜棚田を未来へ繋ぐ土間空間〜
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事業主 :東峰村
設計担当:納谷学、納谷新、高野健太、冨田恵
OYA/岡田祐介
構造設計:小西泰孝建築構造設計 小西泰孝
設備設計:ZO設計室 柿沼整三
照明計画:岩井達弥光景デザイン 岩井達弥
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構造形式:木造在来工法(古民家)
竣工年月:2020年4月
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敷地面積:1078.26㎡(326.17坪)
延床面積:152.59㎡(46.15坪)
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受賞歴 : AACA賞 入賞
掲載雑誌:『住宅特集 2020年10月号』
掲載WEB:【 】TECTURE MAG(https://mag.tecture.jp/project/20210503-antage/)
福岡県・東峰村で、水害復興のシンボルとして、1日1組限定の一棟丸貸し宿泊施設・古民家ヴィラ「あんたげ」を計画しました。「あんたげ」とは、この地方の方言で、あなたの家という意味だそうです。
日本の棚田100選に選ばれた東峰村の美しい棚田に、原風景として残る古民家をリノベーションして宿泊施設として再生し、棚田の魅力を内外に伝え、保存していこうという企画です。
棚田と古民家の魅力を最大限引き出すために、増築や改装が繰り返されていた既存の古民家をなるべく原型にもどしながら、九州産の素材にこだわり、新しく提案した大きな土間空間とオープンキッチンカウンターを中心に、宿泊者がゆったりと日常から離れリラックスできる空間を目指しました。
『住宅特集 2020年10月号』のTEXT
〜棚田を未来へ繋ぐ土間空間〜
福岡県東峰村で2018年に開催されたこのコンペは、古民家を宿泊施設にリノベーションし、高齢化による農地(棚田)や景観の保全をしながら竹地区に新しい仕事を創出しようという試みである。
既存の古民家は、棚田の中で増築を繰り返えしていた。我々は、この古民家を本来の姿に戻しつつ、床のおおよそ1/3ほどにあたる部分に、上下の棚田を繋ぐ土間空間を提案した。
土間空間は既存の天井を抜き、ロの字型の水平補強を施し、大きな吹き抜け空間とした。古民家特有の勾配屋根の下、太く大きな丸太梁が飛び交うダイナミックな空間に包まれる。南北の壁は開放して内部からも石垣が見え、棚田を感じることができるようにした。土間には大きなキッチンを置き、ゲストが自由に使える。宿泊者はもちろん、宿泊者以外も料理教室や食事会などのイベントができる。
この土間空間を挟んで、棚田側に浴室などの水回り空間、道路側に既存の古民家の空間を利用した居間と寝室を用意した。いずれの空間でも棚田の景観を楽しみ、風が吹き抜ける。
2017年7月、九州北部豪雨により東峰村は甚大な被害を受けた。村に通じる山間部は、まだまだ水害の爪痕が濃く、未だに河川や道路の復旧工事に追われている。
「あんたげ」とは、地元の方言で「あなたのうち」という意味だそうだ。
東峰村復興事業の旗手として、「あんたげ」が多くの利用者と村民のコミュニティの場となることを願っている。