湯の山の平屋 〜十字プランと四つの庭〜

作品情報
TEXT
湯の山の平屋 三重県菰野町
  • 設計担当:納谷学、滝沢茂雄
    構造設計:かい構造設計 寺門規男
    施工会社:

  • 構造形式:木造在来工法平家

    竣工年月:2008年11月

  • 敷地面積:538.33m² (162.84坪)

    延床面積:165.69m² (50.12坪)

  • 掲載誌:『モダンリビング2009年度5月号』

湯の山の平屋 三重県菰野町

ご夫婦がリタイア後の生活のため、三重県・湯の山に終の住処を建てることになりました。

もともと敷地の候補は二ヶ所あり、一つは山を背景に田園風景が南側前面に広がる平坦な土地でした。

選んだ敷地は、竹林が広がる湯の山の丘陵地で、南北の敷地高低差がおよそ1.8m程あります。

老後の生活を考えると平家が基本でしたが、敷地にすでに高低差があるので、土地の造成を二段にして高低差を1mにしました。

二人の希望は、お茶のための和の庭と芝生を敷いて孫が遊びに来る洋の庭が欲しいとのこと。

その要望を実現するため、造成した高低差に跨る様に十字型の平面を配置し、四つの庭を確保しました。

一つ目は、玄関アプローチになる山木を植樹した前庭。

二つ目は、リビングに面して芝を敷いた遊びの庭。

三つ目は、お茶を点てる和室に開いた和の庭。

四つ目は、隣地の竹林の借景です。

十字のそれぞれの棟は、ゲストルーム棟、LDK棟、プライベート棟、和室等に分かれています。

十字のプランと四つの庭に囲まれ、老夫婦の穏やかな生活に応える住宅になればと思います。

『2008年』のTEXTより抜粋

〜十字形プランと4つの庭〜

敷地は、三重県・湯ノ山温泉の山裾野に位置する。

周囲には竹林が広がり、敷地の南北方向でおよそ1mの高低差がある。

われわれは、その竹林を伐採し1mの高低差をそのまま使い、レベルの違う二段の造成地を用意した。

また、前面道路側が南面なのだが、その前面道路を挟んだ反対側の敷地とは2m以上のレベル差がある。つまり、道路を挟んだ向かいの住戸から本敷地が見下ろされる関係にある。南側前面道路の向かいの住戸からの視線を切りながら、住戸のプライバシーを確保し、湯ノ山の広大な大地を日常的に満喫できる開放的な住戸を目指した。

クライアントの要望の一つに、庭がテーマにあった。

アプローチを兼ねた洋庭、お茶のための和庭、そしてガーデニングができ、孫が遊べる遊庭とおおきく3つの庭が要求された。性格の異なる庭を3つ、無理なく自然に住宅に馴染ませなければならない。

そこで、われわれはまず最初に平屋で住宅を計画し、敷地の高低差を利用して住居空間に特性を与えることを考えた。1mレベルの違う造成地に建物がまたがれば、同じ住宅の内部空間でも天井高が1m高いダイナミックな空間を内包する場と落ち着いた身体に近い空間が同時に提案出来るのではないか。

また3つの庭を確保するため、建築自体で庭を分節するように十字形の平面計画を採用することにした。東西、南北にクロスする十字プランである。

十字形の平面によって、前面道路の反対側の住戸からの視線を遮りながら一日の光の変化が感じられる南北方向にのびた開放的なLDKの実現が出来た。

十字にのびたそれぞれの部屋からは、それぞれが解放出来る部屋の両側に2つの庭を楽しめることが出来る。つまり、本来お茶のために用意した和庭だが、寝室の書斎や浴室からもその風情を感じとれる。

あるいは、リビングと連続した孫のための遊庭も寝室からも季節を彩る風景として望める。

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