府中の住宅 〜角地の解答〜

作品情報
TEXT
府中の住宅 東京都府中市
  • 設計担当:納谷学、相田宗徳、谷山裕一

    構造設計:かい構造設計 寺門規男

    施工会社:町屋建築工房 小林勇

  • 構造形式:木造2階建て 在来工法

    竣工年月:2009年4月

  • 敷地面積:133.11㎡(40.33坪) 延床面積 :98.54㎡(29.86坪) 1階面積 :53.83㎡(16.31坪) 2階床面積 :44.71㎡(13.54坪)

  • 掲載雑誌:『住まいの設計』

府中の住宅 東京都府中市

敷地は、府中の住宅地の角地です。

二方向に道路があるので、開放的でプライバシーを守るため個室をグランドレベルに、キッチンを含むLDKと浴室などの水周りを2階の中心に置いています。

駐車スペースと庭を分けるように建物を敷地中央に南北に配置すると、2階のリビングから庭と道路側を跨いで見下ろすような関係が生まれます。

1階の個室は道路側に背を向けプライバシーを守り、庭に開いた開放的な個室になります。

ご主人の趣味のシアタールームも1階の道路側で、その屋根は2階のリビングから直接出られるデッキテラスとなっています。

角地でのプライバシー確保と解放性、矛盾した問題を建物を敷地中央に南北に配して、LDKを2階にすることでクライアントの要望の全てを解決した事例です。

『住まいの設計』のTEXTより抜粋

  • 造成されたばかりの真新しい住宅地ではなく、ある程度の年月を越した住宅地なだけに、近隣の木々も落ち着いた緑豊かな住宅地だと感じました。また、既存の住宅も近隣の住宅と同様に南に庭を確保して北側に寄せた2階建てという構成でした。「府中の住宅」は、そんな住宅地の角地に位置するため、近隣の緑も取り込みながら、明るく抜けのいい住宅を提案できないかとイメージしました。
  • 周囲の住宅が北側に寄せた配置だったので、「府中の住宅」は南北に住宅を配置すると、隣地の南側の庭に開く事が出来ると考えました。ですので、大筋の開口部の開け方は、計画当初から近隣の庭の抜け(緑と視界)狙っていました。
  • 構造上の理由もありますが、南の窓に頼ると北側にも窓を確保しないと家の通気が悪くなりますし、東西に窓を確保すると午前中は東側から、午後は西側から光が取り込めるわけですから、南窓神話は無視しました。(笑)
  • もともとこの辺りの住宅地からは、木々の緑が街に溢れていました。「府中の住宅」は、シンボルツリーのヤマボウシを植えていますが、街の緑と連続して庭が繋がるように考えました。住宅はもちろん個人の資産ですが、同時に街並みを構成する社会性という大切な側面を担っているわけですから、少しでも貢献できればと考えています。
  • 二つのバルコニーは性格が違います。リビングに連続したバルコニーは、パブリック性を持っていて、街に開けます。そしてかつての日本の住宅に普通に見られたようなコミュニケーションが生まれたり、街に住み手の生活が溢れたら、街も豊かになると考えました。もう一つのバルコニーは、プライベートなもので、プライバシーを確保しながら開放的に外部を感じれるように提案しました。やはり、住宅は外部空間を感じれる方が生活が豊かになると思います。
  • ご主人の要望の中で、家族や近隣に気兼ねなく使えるオーディオルームは是非つくってあげたかったんです。それは、きっと子どもの頃描いたような秘密基地のような感覚のもので、それを実現するにはリビングに直接扉一枚で繋がっているのではなく、秘密めいていてややこしい動線の方が楽しいと考えました。自分だけの部屋に地下に降りて行くように階段を下りて行くなんて、男はいくつになっても同じです。(笑)
  • 庭と2階の部屋を近づけた方が見下ろす庭ではなく触れる庭になって豊かになると思ったし、1階は寝室なので少し沈めた方がこもり感が出て落ち着いた空間で庭を楽しめると考えました。
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