門前仲町の住宅 〜3層都市住宅〜

作品情報
TEXT
門前仲町の住宅 東京都江東区
  • 設計担当:納谷学、相田宗徳
    施工会社:明工務店
    構造設計:かい構造設計 寺門規男

  • 構造形式:1階RC造 2・3階木造

    竣工年月:2009年10月

  • 敷地面積 :110.16㎡(33.38坪)

    延床面積 :142.52㎡(43.19坪)
    1階床面積 :39.56㎡(12坪)
    2階床面積 :61.53㎡(18.65坪)
    3階床面積 :46.43㎡(14.07坪)

  • 受賞歴:JIA日本建築大賞2011 日本建築家協会優秀建築100選

    掲載記事:『淵上正幸の日々建築漬け』

    テレビ :『渡辺篤史の建物探訪』

門前仲町の住宅 東京都江東区

永代通り通りから一つ入ると、急に静かな空気が流れます。

前面道路は広く小中規模の集合住宅が並び、所々に以前から営んでいただろう中小企業の営業所や窓口があります。

オーナーの会社もその一つ。会社の倉庫になるかもしれないガレージを用意することになり、会社とプライベートを分け音を遮るため一階を鉄筋コンクリート造、地盤が軟弱なため軽くするため2・3階を木造で計画しました。

外観は、コンクリートのガレージの上に二層分の黒い箱が載っている構成です。

敷地いっぱいに建てているのでグランドレベルには、玄関アプローチに植えているシンボルツリーのシマトネリコ以外は緑がありません。

持ち上げた住宅の中に、街とつながりながらプライバシーを守るデッキテラスや坪庭、屋上テラスを設けています。

グランドレベルから離れても街の気配を感じ、都市の自然を楽しむ都市型戸建て住宅ができました。

『日本建築大賞』のTEXTより抜粋

敷地は、東京の江東区 門前仲町の永代通りを一本入った通りに位置する。

クライアント家族は、もともとこの辺りに住み、家族で事業を経営している。

そして、仕事場の隣地に所有していた老朽化した古い木造のアパートを、息子夫婦の住宅として建替えることになった。

当初、われわれは交通量の多い永代通りが近いので、車による騒音の問題を懸念したが、通りから60mほど入った敷地は思いのほか静かだった。週末は、近隣のオフィスが休日となるため、さらに静かなエリアとなる。

しかし、問題は光と風。周囲は昔ながらの小さな町工場がところどころに点在し、3〜5層ほどのマンションやオフィスビルが混在しながら街全体を構成している。

一般的な郊外の庭付きの住宅地とは違って、決して街の通り沿いに緑があふれるような住環境は求められないが、周囲の中高層の建物に囲まれて取り込みにくい光と風さえ確保すれば、都市型の静かな住環境となり得る。

そこで、われわれはまず最初にその光と風を確保しやすくするために、1階部分に駐車スペースと納戸、それに玄関といった居室以外のスペースを割当て、鉄筋コンクリート造とした。

そして、それ以外の住宅を構成する主な諸室を2層の木造として計画し、道路レベルの日中のオフィスの雑踏から住戸を切り離し、光を享受しやすい様に住戸全体を2階3階レベルに持ち上げた。

ちょうどコンクリートの箱の上に木の箱を載せたような格好である。

木造としたのは、光と風を通しやすい開放性を確保するためと、このエリア一体の軟弱な地盤に対して少しでも建物を軽くしたかったためである。

これで、光と風を取り込むための建物の基本的なベースが出来た。

基本的なベースが出来たといっても単に部屋を廊下と階段で繋ぐような計画では、光と風は得られない。

つぎにわれわれは、木造の大きな箱の中に3つの小さな箱(部屋)をコウモリのように3階部分をぶら下げるように計画し、2階部分に柱が落ちないようにして2階のプランの自由度を失わないようにした。

ぶら下げた3つの小さな箱(部屋)と箱(部屋)の間には風が通りやすい適度な隙間をつくり、下の階の吹き抜けとした。外壁を構成する大きな箱と小さな箱との間に生まれた隙間には、外部に開閉できる大きな開口を用意した。

吹き抜けを介して間接的に光を取り込むため、近接した燐戸や通りの反対側からも住戸のプライバシーは守られ、吹き抜け上部からは、一日中角度を変えながら豊かな光がLDKスペースに降り注ぐ。

平面的にはテラスやルーフバルコニーといった外部空間を取り込み、断面的にはぶら下げられた小さな箱の隙間によって生まれた3つの大きな吹き抜け(上部)を介して光と風を享受する。

そして、都心部にありがちな中高層に囲われた敷地に建つ都市型住宅の一つの回答に辿り着いた。

『渡辺篤史の建物探訪』のTEXT

敷地周囲は昔ながらの小さな町工場がところどころに点在し、3〜5層ほどのマンションやオフィスビルが混在している。

1階部分に駐車スペースと玄関といった居室以外のスペースを割当て、鉄筋コンクリート造とし、住宅を構成する主な諸室を2層の木造とし、そのコンクリートの箱の上に載せた。

木造としたのは、光と風を通しやすい開放性を確保するためと、このエリア一体の軟弱な地盤に対して少しでも建物を軽くしたかったためである。

木造の大きな箱の中に、3つの小さな部屋をコウモリのように3階部分をぶら下げ、2階部分に柱が落ちないようにし、2階のLDKを大きく確保した。

ぶら下げた3つの小さな部屋と部屋の間には風が通りやすい適度な隙間をつくり、下の階の吹抜けとし、外部に開閉できる大きな開口を用意した。

吹抜けやバルコニーを介して間接的に光を取り込み、通りから住戸のプライバシーを守り、一日中豊かな光がLDKスペースに降り注ぐようにした。

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