吉祥寺南町PROJECT 〜名前のないスペース〜
-
企画販売:株式会社リビタ 宇都宮潤
-
設計担当:納谷学、源真希
-
構造設計:高橋建築工房 高橋政則
-
施工会社:YAZAWA LUMBER 金谷
-
建物規模:地上2階
構造形式:木造在来工法
竣工年月:2018年6月
-
敷地面積:232.26 m² (70.26坪)
-
延床面積:129.18 m² (39.07坪)
-
1階床面積:83.64 m² (25.30坪)
-
2階床面積:45.54 m² (13.17坪)
-
掲載WEB:【 】TECTURE MAG
このPROJECTは、市場に出回っている中古の戸建住宅を購入し、私たち設計事務所がリノベーションを施した後に、再び世の中に再販して送り出すという事業です。
与えられた課題は、4LDKの在来木造の二階建て住戸。
敷地は広く、建蔽率と容積率に少しゆとりがありました。
でも部屋数は十分に足りています。
そこで、面積にゆとりのあるこの土地にさらに必要以上の部屋を付加することに意味が見出せず、ダイニングスペースやリビングスペースと名を打つような特定の明確な機能のない、あるいは多様でどう使っても構わない、あえて言うならサンルーム?の様な、名前のない2層のヴォイド空間をこの住宅の南側に増築することにしました。
このヴォイド空間は、いずれ計画されるだろう南側の隣地(現在はパーキングと木造アパート)から適当にプライバシーを守り、季節に合わせて太陽の熱をコントロールして、分離している1・2階を繋げ家族のコミュニケーションを図る基本機能を持ち合わせ、その上で建具の開閉により、インテリアになったり、庭に近づいたり、空間的には中間領域の顔を持ち、サンルームという単体のスペースの響きではなく、もっと多様で豊かな「名前のないスペース」なのです。
『2018年』のTEXT
「吉祥寺南町の住宅」は、JR中央本線・京王井の頭線の吉祥寺駅から徒歩15分、井の頭通りから北に40mほど入った静かな住宅地の一画に位置します。
既存の住宅は木造2階で、敷地約70坪の素直な矩形の敷地形状に21坪ほどの建坪で建っていました。つまり、既存建物は敷地周囲から比較的広く距離をとり、特に南側と東側には大きな庭を設け、採光・通風が充分確保できる環境にありました。また、現在南側の隣地は駐車場となっていますが、井の頭通り沿いに建つ10階建てのマンションが、季節によって敷地の庭まで影を落とします。
そこで、既存の住宅が増築できることと部屋数が十分確保されていることをふまえ、既存の住宅を拡大コピーしてそれぞれの部屋を大きく引き延ばすのではなく、名もないというか様々な用途に使い分けられる多様なスペースといった方が良いかもしれない、そんなスペースを既存建物の南側に付加させることにしました。
付加するスペースは、2層分の吹抜け空間で、サンルームのようにガラスに包まれ陽の光をスペース全体で受け、繋がる全ての部屋に心地よい明るさと通風を確保します。季節や天候によって開いたり閉じたり、庭と一体になったり近づいたり、・・・。
そこで植物を育てることはもちろん、テーブルと椅子を出してコーヒーを飲んだり、食事したり縁台で昼寝するのもいいでしょう。
繋がる個々の部屋は、マンション側からの視線が適度に遮られ、庭先の緑を呼び込みます。2階のそれぞれの個室は吹抜けを通して下の階と繋がりますから、家族の会話もしやすくなります。
「吉祥寺南町の住宅」は、住み手によってさまざまな使い方が出来るユニバーサルな吹き抜け空間を用意し、プライバシーを守りながら住宅内部の環境をコントロールして、家族の生活を豊かにする新しいリノベーションの空間を提供します。