徳島の住宅 〜二つの顔(ファサード)を持つ住宅〜
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設計担当:納谷学、島田明生子
企 画:ASJアーキテクツ・スタジオ・ジャパン
構造設計:長坂設計校舎 長坂健太郎
施工会社:アークホーム 吉田隼人、尾藤貴政
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構造形式:軽量鉄骨造3階建て
竣工年月:2013年12月
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敷地面積:108.30㎡(32.76坪)
延床面積:96.89㎡(29.31坪)
1階床面積:22.36㎡(6.76坪)
2階床面積:40.99㎡(12.40坪)
3階床面積:33.54㎡(10.15坪)
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掲載誌 :『住宅特集 2015年6月号』
『設計事例』
徳島の駅前から続く商店街が終わりかけたところ、住宅街ははじまりかけたところ、表通りは近隣商業地域、裏通りは敷地の前が小学校で住宅街が続きます。
表通りには、クライアントが営む店舗としてのファサード、裏通りには子供たちを迎い入れる住宅としてのファサード、2つのファサードを持つ住宅を商業空間としてのストリートスケールと住宅としてのヒューマンスケールのスケールの違いを使って計画しました。
両方の通りに面して異なるスケールのボイド空間が、おおらかな店構えと優しい家構えで建ち上がりました。
『住宅特集 2015年6月号』のTEXTより抜粋
〜商業地の顔、住宅地の顔〜
建築のファサードは、常に周囲の街並や環境に対してどう応えるか問われている。商業エリア、オフィス街などその建物の用途によって街の様相も変わっていく。そしてなんとなくその街らしさを感じている。
住宅地における住宅としての顔、佇まい、あるいはらしさも、具体的ではないがみんながなんとなく共有しているように思う。らしくない住宅も楽しくて刺激的だが、私たちがここで探している答えではない。
では、なんとなく共有している「らしさ」とは何なのか、切り妻や片流れあるいは陸屋根、板張りと金属、新建材といったような具体的な形や素材、あるいは色彩も重要な要素であるとは思うが、もっと抽象的な答えによるらしさに辿りつきたい。それは、きっとなんとなく共有している「らしさ」の本質に近づくことではないかと考えているからだ。
敷地は、徳島市の中心市街地、東西2本の通りに接している。
西側の通りは歩道を備えた交通量の多い幅員15mの道路で、先の商店街へ繋がる。東側の通りは小学校を目前に幅員6m、そのまま静かな住宅地へと続く。
クライアントは、この地域に住みながら小さな美容サロンを構えたいとのこと。我々は、1階をサロン、その上に住宅を載せ、同時に西側の通りにその小さなサロンの顔を、東側に住宅の顔を用意することにした。建物を断面的に考察すると1階から3階まで貫く階段を中心に2階のリビングを東側に跳ね出させ、3階の子ども部屋を西側に跳ね出させた。
跳ね出させたリビングの下には、高さを抑えた水平性の強い大きな庇状のスペースが生まれ、車の乗り降りが楽になる。またその上には水周りから繋がるテラスも出来た。3階の子ども部屋の下は、跳ね出しは小さいが両側の建物の間にも挟まれ、縦方向に強いヴォイド空間が街並に現れる。
水平性の強い身体スケールのヴォイド空間と鉛直方向のダイナミックなヴォイド空間、商業エリアと住宅地の狭間に建つこの住宅は、その二面性を共有しながら成立している。
「徳島の住宅」は、商業建築でも単なる住宅でもない。都市と住み手を繋ぐ建築のなんとなく共有している二つの「らしさ」を保つため、抽象的なスケールによって表現することに辿り着いた住宅である。
『設計事例』
〜二本の動線と抽象的なスケール〜
敷地は、徳島市の中心市街地、東西2本の通りに接している。
西側の通りは歩道を備えた交通量の多い幅員15mの道路で、先の商店街へ繋がる。東側の通りは小学校を目前に幅員6m、そのまま静かな住宅地へと続く。
クライアントは、この地域に住みながら小さな美容サロンを構えたいとのこと。我々は、1階をサロン、その上に2層の住宅を載せた。建物を断面的に考察すると1階から3階まで貫く階段を中心に2階のリビングを東側に、3階の子ども部屋を西側に跳ね出させた。
美容サロンのアプローチには、鉛直方向のダイナミックなヴォイド空間を、オーナー住居へのアプローチには水平性の強い身体スケールのヴォイド空間を用意し、商業エリアと住宅地の狭間に建つこの住宅を、二面性を持つ一つの住宅として成立させた。
「徳島の住宅」は、商業建築でも単なる住宅でもない。都市と住み手を繋ぐ建築を、二本の動線と抽象的なスケールによって表現することに辿り着いた住宅である。