板橋の住宅 〜プライバシーを柔らかく守る〜
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企 画:ザ・ハウス
設計担当:納谷学、藍澤和孝、野中郷太
構造設計:かい構造設計 寺門規男
施工会社:小池工務店 浦口雄一郎
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計画範囲:鉄骨3階建ての1・2階部分
竣工年月:2008年8月
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延床面積:72.95㎡ (22.06坪)
1階面積:28.47㎡ (8.61坪)
2階面積:44.48㎡ (13.45坪)
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コラム :ALL ABOUT
住まいの設計
掲載誌 :『リアル・デザイン2009年度6月号』
『Casa BRUTUS 2010年度2月号』
『住まいの設計2010/04』
既存の建物は鉄骨3階建てで、1階は駐車スペース2台分のピロティ、2・3階はそれぞれ賃貸住宅と貸していましたが、1階と2階を4人家族のための住宅にするというリノベーションです。
1階は、2台分の駐車スペースの1台分を水周りと子供部屋にしました。
2階は、元々バルコニーだったのを内部化して、外側にポリカーボネートを貼りました。この住宅の前には工場があり内部が丸見えになりいつもカーテンを閉め切った生活でしたが、ポリカーボネートの壁によって内部に光を取り入れながら、真向かいの工場からの視線を気にせず生活ができる様に柔らかくプライバシーを守りました。
2階のプランは、T字型の壁を中央に置き、三分割したスペースにリビング・ダイニングとキッチン、それにメインベットルームを割当てました。
T字の壁の3つのスペースには、それぞれに3種類の仕上げを施しました。
リビング・ダイニングには桐の板、キッチンにはモザイクタイル、そしてメインベットルームにはカーペットです。
2010年のTEXTより
〜T型スペース〜
「板橋の住宅」は、敷地周辺に町工場が立ち並ぶいわゆる下町の一画にある。
建物は、築20年の鉄骨3階建。外壁はALC貼りで、建坪街でよく見かける小さなボリュームである。1階のピロティーは車3台分の駐車場として、2・3階はそれぞれ2世帯の住戸として使われていた。
我々は、1階の2台分の駐車スペースと2階部分を1世帯の住宅としてリノベーションすることになった。
我々は、1階の車2台分のスペースを個室と浴室などの水廻りに、2階は以前バルコニーだった部分を住戸の熱環境を整えるためのバッファーゾーン(内部空間)として取り込み、同時にこの住宅の目前の町工場に出入りする人からプライバシーを保護する空間としても機能するようにした。
また、2階にはリビング・ダイニングとキッチン、それに主寝室などを配したが、それぞれのスペースは、平面上の中央に立てられたT型の壁によって仕切られ各々のスペースの外壁側をサーキュレーション出来るようにした。
そして、仕切られたスペースの壁の内側には、リビング・ダイニングには桐のフローリング、キッチンにはモザイクタイル、主審室にはカーペットという具合に、それぞれのスペースに見合うシンボリック(装飾的?)な仕上げを施した。
それぞれのスペースは、T型の壁で分節されながらも互いのスペースから閉じながらも繋がるようないくつかの開口を設け、その大きさや位置を微妙にコントロールした。それによってキッチンから寝室を通してリビングとつながったり、寝室から直接キッチンやリビングとつながったりという具合である。
移り住んだ家族が、互いのテリトリーの中、互いの存在をより身近に感じてもらえればと考えた。